あの頃を振り返ってその活況ぶりの証左として「666日連続満員御礼」を挙げる人いますけど、
それちょっと違いますからね、って話。
記憶と事実が離れていても、そのうち記憶が事実になっちゃうからね。
満員御礼が垂れ続けてたのは、1989年の九州11日目(水)から97年夏場所2日目(月)まで、足掛け46場所、すなわち実に44場所は初日から千秋楽まで丸々大入満員が続いてました。
でもね、これ「若貴ブーム」とか「曙貴時代」ってのとはちょっとズレてますよ。
ま、「若貴ブーム」の翳りと共に客入りは衰退していったって意味では合ってんですが。
どんな時代だったか。
初日から千秋楽までフルに連続満員の場所ってのが始まった90年の初場所。
横綱は千代の富士、北勝海、大乃国でした。双羽黒はその2年前に辞めちゃった。てかこの初場所の直後にプロレス行きを電撃発表。
六十二代大乃国から3年ぶりの六十三代横綱に旭富士が昇進するのはこの年の名古屋場所後。
初場所の顔触れ、大関は他に北天佑、小錦と3人、関脇も寺尾、水戸泉、琴ヶ梅と3人、小結が両国に霧島。
他に幕内番付で年寄として協会に残ってる人、高島、入間川、井筒、粂川、春日野、秀ノ山(仮)、高田川、花籠、高崎、鏡山、常盤山、勝ノ浦。
そして若者頭の花ノ国さん。
残ってない人の顔触れの方が面白いなぁ、
龍興山はなんとこの初場所直後に急死。二十山部屋、田子ノ浦部屋を創設した北天佑と久島海もすでに鬼籍入り、春日山部屋を継承した春日富士はモゴモゴモゴ…、旭道山は後に国会へ、板井もモゴモゴにしとこう。孝乃富士もモゴモゴ、いやジェロム・レバンナにパウンド勝ちして娘リングで抱き上げてた頃は輝いてたぞ、でもその後結局モゴフガ…
「花の三八」の関取経験者、全員が幕内に揃ってたんだなぁ。
あ、北尾もういなかった。
で、この場所十両だった貴花田は翌春場所新入幕、その場所で千代の富士1000勝。
この年の優勝は千代の富士、北勝海、旭富士、旭富士、北勝海、千代の富士。
夏、名古屋と連続優勝した旭富士が昇進して四横綱体制一時復活、そんな年。
時間を戻して前年どんな感じだったか。
そのさらに前年の九州千秋楽結びの一番で大乃国が千代の富士の連勝を53で止めちゃいましたよさぁ明けまして今年はどうなる、ってとこから始まる。どうなるもこうなるも元号が変わっちゃった。あれが昭和最後の一番だったかとしみじみしながら自粛ブームの中ひっそり始まる。
で、北勝海(初)、千代の富士(春)、北勝海(夏)、千代の富士(名)、千代の富士(秋)と優勝、九州場所は大乃国が休場だし、今年は九重勢が賜杯独占かぁ、ってなとこに伏兵あらわる。
「やっぱデカイだけじゃ相撲は無理だわ、結局勢いもここまで、いよいよ大関陥落かぁ」
と囁かれてたカド番大関小錦が初日から土付かず、あれよあれよの快進撃、10日目に慌てて割を崩して当てた大関旭富士も撃破、おぃおぃ高見山みたいなシオらしい外人はともかく、ろくな相撲も取れないクセに態度と図体ばかりでかいのなんか止めちゃってくれよー北天佑!ってのが11日目。
こっから始まったのが666日連続満員御礼。
結果この日は大関北天佑にも止められず。
翌12日目に横綱北勝海がどうにか引きずり転がして援護射撃。両国に不覚を取り1差で追ってた千代の富士が追いつくも、翌13日目の直接対決で吹き飛ばされてまた1差。審判部まさかこんな事になると思ってもみなかったから、残ってた相手が14日目平幕巨砲、千秋楽関脇琴ヶ梅。さっさと片付けて結びを待たずに初優勝。高見山以来の快挙に合衆国大統領ジョージ(父)ブッシュからの祝電、はくれなかったみたいよ。
で、明けて90年は前述の通り。
この年のうちに若貴曙と幕に顔を揃えます。
たしかに「貴ノ花の息子たちが」って入門時から騒がれてましたし、ワイドショーとか女性週刊誌とかでオバサマ人気も盛り上がってました。
でも土俵の中心はやっぱり千代の富士、及びそれに挑みかかる名脇役衆、だったと思いますよ。
大鵬以来に小学生をテレビの前に呼び集めた千代の富士もすでに全盛とは言えぬ衰えが見え、それだけ増して「ウルフスペシャル」の強引さが際立つ、そんな土俵。
そういえば逆鉾寺尾、若貴に加えての小城の花小城錦兄弟にも
翌91年、「体力の限界っ!」の年ですね。
実質3場所近くにわたる休場明けで迎えた大阪場所、初日に組まれた初対戦の貴花田、思えば親子相手に取ったっての、他に例が無いと思います。以前ずさんに調べたけど少なくとも戦後の関取経験者の中にはいなかった。玉龍あたりやってないかなと思ったけどやってない。土俵で親子どんぶり売ったの千代の富士だけ。のはず。
これに敗れの板井に餞別の白星貰いの貴闘力に振り飛ばされて土俵を飛び出しので、先の一言発令。
でも満員御礼は続く。
翌夏場所には大乃国も引退しちゃって残った横綱が北勝海と旭富士って地味どころ。
成績的にもこの年優勝はそれぞれ一場所ずつ。
おまけに
秋場所:北勝海初日より休場、旭富士中日を待たずに休場、
九州場所:旭富士初日より休場、北勝海中日より休場。
こんな横綱いるんだかいないんだかわかんない中、土俵はまさに戦国模様。
初場所の霧島初優勝は大関だからともかく、名古屋場所は琴富士ですよ琴富士。
平幕優勝も高見山や栃東(父)みたく幕内上位の実力者ならいざしらず、フタ桁からは蔵前最後の場所での多賀竜以来の大事故。
繰り返しますが琴富士ですよ。
ぼく顔や姿はぼんやりアレしてますけど、取り口持ち味なんて正直さっぱり覚えてないです、
ごめんなさい琴富士。
続く秋場所も平幕優勝。
九重勢の優勝まわし合いにアヤつける金星挙げて土俵を引っ掻き回すわ、婚約破棄を破棄しますって他人の人生引っ掻き回すわで絶好調の琴錦に賜杯。
満員御礼は続く。
一年納めの九州場所はケガからの復調(何度目だよ)の大関小錦が優勝と(土俵上に)横綱不在の留守番を果たす。
そういやこのころ霧島って対小錦戦になると勝敗度外視して吊りにいってたよなー。
武蔵丸、舞の海、貴ニョ浪なんかが入幕して役者が揃ってまいりました、そんな年。
キリないからほどほどにしとくけど、翌92年はついに番付上からも横綱姿消しますよ。
じゃぁ誰か代りになれよ、ったって小錦、曙、貴花田、若花田、水戸泉、栃ノ和歌なんてあたりが組んず解れつ星を奪い合いながら昇進争いしてるとこに琴錦、安芸乃島なんて邪魔が入る。
まだまだ垂れ続ける満員御礼。
このころ土俵の外ではどんなことになってたか、アノ人を軸に振り返ってみましょう。
今なら持ってるだけでしょっぴかれるとの噂もある「Santa Fe」発表一周年に突然の婚約発表。
翌場所で大関昇進を決めるや、その伝達式当日に集まった報道陣を前に婚約解消とまさかの大発表。あまりのカッコ良さに後にメジャー移籍を決めたダルビッシュがお手本としてあやかったのは衆知のところ。
「ノ」の字を「乃」に改め迎えた94年は、秋、九州と連続全勝優勝で横綱昇進、真価を問われる新横綱の場所も優勝するや乗った調子で場所後には囁かれていた河野景子さんとの交際も胸を張って白状。
「昼もケイコ、夜もケイコ」の名言が捏造・流布されるも蛙の面に小便。
夏場所後に挙式、とこれはいささか慌ただしいのではないかと訝る向きにも、実は押さえていた式場をムダなく活用する切れ者ぶりを発揮したまでのこと。
「できちゃったから?」の声を両者きっぱり否定したからには秋場所後に産まれた長男はたぶんマリア様以来約2000年ぶりの処女懐胎と慶事は続く。
幼な子に吸い取られるようにりえ激速ダイエットを披露。
あー書いてて楽しくなり始めた自分がイヤ。
とにかくね、満員御礼が途切れる97年夏場所ってのは、まだ若貴ブームの真っ只中だったです。
この後まだ一山も二山もあるんですから。
若乃花が横綱昇進したの98年夏場所後、これで「史上初の兄弟横綱誕生」、
一年遅れて武蔵丸が昇進したのが99年の夏場所後、これで「四横綱体制再整備」。
小泉純一郎が「感動したあっ!」なんてやったの01年ですから。
それが00年の九州場所じゃ初日から千秋楽まで一度も満員御礼が出ないって真っ逆さまの凋落ぶり。
これじゃ「角界の不祥事続き」「見放されて客離れ」を言われた今から2、3年前よりヒドイんです。
若乃花は引退してたとは言えども、交代で休み休みとは言えども、まだ貴・曙・丸は残ってた。丸って潮丸じゃないよ、まだ幕下、あせるな。
魁皇・千代大海の叩き上げに出島・武双山・雅山の学生上がりスピード出世の合わせて5大関がクンロク大関言われながら星を奪い合ってた頃です。
貴乃花が丸々一年以上休場して顰蹙買うの、この後のことですよ。
土俵の中は変わらぬ熱戦・混戦が続く中、いったい何があったんですかね。
客入り急凋落さなかの98年、
「花田家の血の秘密」なんて誰が聞いても笑止千万、断固根も葉もないヨタ話を自称整体師に吹き込まれるやあろう事か真に受け、「若乃花のー、相撲にわー、基本が無いと思うんですねー」に始まる一連の洗脳騒動勃発。
負け相撲の帰り際「こん畜生ぉ~! このまま負けてられねぇよ、暴れて暴れて暴れまくってやるよぅ。楽しくやろうぜぇ~」ってオマエは新日二線レスラーかよってな怪言動で大相撲ファンを一人残らず震え上がらせたのもこの頃。
書いててだんだんヒドイ話になってきたのが自分でもよくわかるんでそろそろやめる。
だってヒドイ時代の話なんだもん、ぼくのせいじゃない。
だからって誰のせいにもしたくはない。
誰が見たって誰のせいでも無いでしょ、ですよね。
結論?
そんなもん無いよ。
とにかくそんなかんじでしたよ、ってだけの話。
他意はござらぬ只の御見立。
「よおっ やってるかー?」 今回のエントリーと一切関係ありません のちの五十四代横綱輪島大士、大関昇進直前のご勇姿 |
うっへ~、20行ぐらいで済まそうと思った話がこれだよ。