火曜日, 4月 14, 2015

地球を測る地球で測る 地球やなんかの大きさ 1/4


一千万分の一サイズの地球儀を愉しむ独裁者


地球の大きさとか丸さとか、その周りを回る月の距離と大きさ、それと一緒に回る太陽との距離や大きさ、他、地球の大きさを元にした単位の話とか、その他もろもろの覚え書き。
肝心なことをずっぽり抜かしながら脇道にそれては瑣末ことを細々と連ねていますが、覚え書きとはそういうものです。



地球の大きさはどのくらい?

先に答から言ってしまうと、地球一周の長さ(大円:球を中心を通る平面で切ったときにできる切り口の円)は40,000kmです。
球ですから、切断面が中心を通るかぎり、縦に切っても横に切っても斜めに切っても同じ大きさの円ができます。

「ほんとは地球はひしゃげて潰れているから赤道一周と子午線一周の長さは違うんじゃないか?」
厳密に言うとそうかもしれませんが、たいていのばあい無視して大丈夫です。
それについては次項で説明します。


「子午線」というのは北極から南極を通ってまた北極へと一周回ってる線です。
地図でいうと経線が子午線です。
すべての経線は子午線です。特定の経度の経線じゃなくても子午線です。
昔の人は方角を十二支で表現しました。ね、うし、とら、う…の十二支です。
北を示したのが「子(ねずみ)」、南を示したのが「午(うま)」、
南北を結ぶ線はすべて「子午線」です。
朱雀大路も子午線です。
どこにいても子午線
甲子園の投手にとっての子午線と
突然現れた子午線にビビる森くん



一周が40,000kmですから、それを円周率で割り算すれば直径が出ます。
40,000km = 40,000,000m、これを円周率で割ると
40,000,000 / π = 12,732,395.4m
だいたいこれが地球の直径です。

ちなみに日本の総人口は127,083,000人(2014年10月確定値)、なんだか似た数字ですね。
日本人一人当り約10cm。 まったく関係の無い数字ですが。
日本人を一人当り10cmで重ねると、2003年に赤道面直径を超えましたたが2012年には割り込み、2014年5月以降は極直径をも下回っています。まったく意味の無い数字ですが。

日本の総人口の推移と地球の直径
それぞれ下回りそうになった時期にしばらく横ばいで抵抗してるとこがいじらしいですね。まったく意図したわけじゃ無いんでしょうが。




地球の大きさを計算したエラストテネス

地球の大きさを最初に測ったのは、紀元前240年頃、リビア生れのギリシャ人エラストテネスです。
アテネやアレクサンドリアで学び、後にアレクサンドリア図書館の館長にも任じられたエラストテネスは、やはりアテネやアレクサンドリアで学んだアルキメデスより12歳年下で、実際に親交もあったと言われています。交友関係の濃密を二千年も経ってからどうこう言うのもあれですが。

ある日エラストテネスは、
「シエネでは夏至の日の正午には、井戸の底まで日が当る」と耳にしました。
シエネは現在ではアスワンと呼ばれ、大きなダムがあるナイル川上流の町です。
アレクサンドリアでは夏至の日にいちばん高くは昇るけど、真上までは昇らない。
「これはきっと大地がたいらではないからだ」
「大地は球形をしているんだ」
とエラストテネスは確信します。

夏至の正午にアレクサンドリアで垂直に立てた棒とそれにできる影の長さ、棒との角度を測り、
アレクサンドリアからシエネまでの正確な距離がわかれば、
丸い地球の大きさも計算できるはずだ、と思いつきました。


アレクサンドリアからシエネまでの直線距離は約850kmあります。
その頃はまだその距離は知られていませんし、直線距離を測っても意味はありません。
それに、この頃はまだkmとかメートルという単位はありません。
後ほど出てきます。
エラストテネスは実際には「スタディオン」という単位で測りました。

スタディオンとはどんな長さの、どういう意味の単位でしょう。
「太陽が、その直径分だけ移動する間に、人間が歩ける距離」
「水平線からチラッと現れた太陽が、すっかり全体を現すまでに歩ける距離」です。

太陽の視直径は角度にして約0.5度あります。
一日は1440分、その間に太陽は360度回ります。
その720分の1ですから、約2分間、
その間に歩ける距離は町の人によって違ったようです。
アテネやデルファイでは現在の約178m、オリンピアの人は約192mくらい歩いたようです。
なので1スタディオンの長さは町によって、時代によっていくつもの種類がありました。

スタディオンの定義と古代アレクサンドリアの大通り

エラストテネスの測量隊はアレクサンドリア-シエネ間の距離を5,000スタディオンと見積もりました。
これをアテネ式で計算するとメートル法でいう約890km、オリンピア式だと約960kmになります。

間違えた、「北回帰線」だ
図版直すの面倒だから今度やる

「シエネでは夏至の日の正午には、井戸の底まで日が当る」
すなわち夏至の南中時には太陽が真上にくる。
あとは夏至の正午にアレクサンドリアで垂直に立てた棒と、その棒が作る影の先端とのなす角度を測ればいいのです。
結果、7.2度と計測されました。
これをユークリッドの平行線公準に当てはめれば、地球の中心から両都市への直線がなす角度と同じであることは自明です。
ユークリッドはエラストテネスが生れた年に亡くなっていると思われ、その頃すでにその業績は多くの学者に学ばれていました。

7.2度は一周360度の50分の1です。
したがってアレクサンドリア-シエネ間の距離を50倍すれば、地球一周の長さが出るのです!
890km×50 = 44,500km (アテネ式)
960km×50 = 48,000km (オリンピア式)
現代の数字の40,000kmと比べて誤差10~20%くらい、まずまずな精度だったといえます。

エラストテネスの測量隊はアレクサンドリアからシエネまでの距離をどう測ったのでしょう。
直線距離を直接測る方法はありません。
また道はナイル川に沿って曲がりくねっています。
「アレクサンドリアを出て最初のポイントは南へ10スタディオン、西へ2スタディオン」
「○○の町から次の町へは北に2スタディオン、東へ8スタディオン」
と測り、シエナまでの合計を出したものと思います。

「その土地での夏至の正午」に影を測ればいいのですから、東西の成分は関係ありません。
どうせ長期の測量旅行に耐える正確な時計があるわけじゃないですし、同時には測れません。
南北の隔たりさえわかればじゅうぶん役に立つ計算ができます。
現在知られている「南へ800km、東へ275km」という数字を知っていたらどうでしょう。
800km×50 = 40,000km
お見事、ぴったり誤差がありません。


メートルと海里

現在一部の国をのぞいて広く使われているメートル法。
いつ頃、どういった経緯で決められたのでしょう。

1790年、タレーラン(Charles Maurice de Talleyrand-Périgord)というフランス人が、
「世界中の人が共有できるように長さの単位を統一しようじゃないか」と提唱します。

普遍的な新単位の条件として、
・どこの国にも公平に、特定の固有文化にも拠らないこと
・いつどこでも同じ長さで使われるように、科学的に定義できること
・長すぎず短すぎず、人間サイズにも街のサイズにも扱いやすい大きさ
が求められました。


最初は「片道1秒の周期を持つ振り子の長さ」としようという話になりました。
材質や構造を規定された一往復2秒かかる振り子の長さは、3Pied 8Ligne1/2 ありました。
Pied も Ligne も当時のフランスで使われていた単位です。
Pied は英語のFoot(feet)に相当する足の大きさに由来した単位です。
当時のフランスでは1Pied = 約304.8mmですが、地域や時代によって微妙に異なります。
もちろん英語圏の Foot ともわずかに異なった数値です。
Ligne は仏インチの1/12、1Ligne = 約2.256mmですが、これも英インチとは似ていて異なる長さです。
日本では仏インチや英インチに近い単位として寸を使っていました。
これほど各国で長さの単位に共通性が無いと、大昔ならいざ知らず、大航海時代を経て大洋をわたって世界中が交易で結ばれた時代には、不便で仕方がありません。
共通新単位が必要とされたわけです。
ところで 3Pied 8Ligne1/2ですが、どのくらいか計算してみましょう。
(304.8 × 3) + (2.256 × 8.5) = 933.576 (mm)
うーん、1メートルよいうより1ヤードに近いですね。
「一往復に2秒かかる振り子の長さ」は、厳密には測定する場所の緯度によって誤差を生じ、また当時それほど正確な「時計を測る時計」がなかったこともあり、正式な採用には至りませんでした。

次に提唱されたのが「地球一周の長さの4千万分の一」という案でした。
すなわち「北極から赤道までの距離の千万分の一」です。
1792年から1799年にかけて、今度はパリを基点に北のダンケルク、南のバルセロナまで、測量隊は三角測量を繰り返しました。

ダンケルクからバルセロナまでの測量図

その結果、1メートルは3Pied 11.296Ligneに改められ、ほぼ現在のメートルと同じ長さが定義されました。
1799年、新しいメートルは採決され、さっそくプラチナ・イリジウム合金製のメートル原器が作成され、以降しばらくは、このメートル原器こそが1mの正しい長さとされました。

ん? おかしいな。
(304.8 × 3) + (2.256 × 11.296) = 939.883776
これじゃほとんどさっきのと変わらないじゃない。
3.28Pied、もしくは3Pied 38Ligneならほぼ1メートルなんだけどなあ。
304.8 × 3.28 = 999.744
(304.8 × 3) + (2.25600 × 38) = 1000.128
まあいいか。

その後1メートルとは、
「86Kr(2p10-5d5)の遷移に伴う光の波長(0.6057802105μm)の1650763.73倍」(1960年)
「光が1/299792458秒間に進む距離」(1983年)
と定義は改められますが、長さはほとんど変わりません。
精度が上がっただけです。
また近頃はメートルの定義に不可欠な時間の測定に「光格子時計」なる精度18桁、300億年に1秒と狂わない桁違いに精度の高い時計が開発され、もはや「その場の重力次第でメートルの持つ長さも変わる」事態になっています。
「メートルの定義」は「光速の定義」と「時間の定義」次第ということになっています。


もう一つ、メートルと同じように大航海時代に地球の大きさを基準にした長さの単位があります。
それは「海里(nautical mile)」です。
海里の元々の定義は「緯度1分の長さ」でした。
赤道を0度、極を90度とする緯度の1度を60に分割したものが1分です。



90度= 5400分、
メートル法が一千万で割った距離を5400で割ったものが1海里です。
10,000,000 ÷ 5400 = 1851.85185185185… 185が永遠に繰り返します。

海里は字の通り主に海で使われました。
慣例的に航空機でも使われます。
航空券を買うと貯まる「マイル」は、この海里の数字です。
また船舶や潮流の速度をあらわす「ノット」は、「1時間に1海里進む速度」です。

現在でも海図では海里が使われていますが、普通の地図のように縮尺の目盛がついていません。
広域海図での海里の目盛は緯度によって誤差が出てくるので、該当する緯度付近の緯度目盛を使います。


海図の左右には緯度目盛があり、上下には経度目盛があります。
海図上で距離を計るのに経度目盛は決して使いません。
なぜなら赤道付近では経度1度は111kmほどあるのに対し、房総半島、伊豆半島、大阪、中国地方の属する北緯35度帯では経度1度は約91.3kmと2割ほど減り、緯度が高くなるにつれどんどんその長さは短くなり、オスロなどが属する北緯60度帯では半分の55.8km、ついに極ではほとんど0同然になるからです。
南極点に立ったとき、その足元には360本の経線が放射状に広がっているわけです。

それに対し緯度目盛は「同じあたりの緯度の範囲内ではほぼ正確」だからです。
なのでこの緯度目盛が距離目盛として使われています。

しかし地球が微妙にひしゃげているため、海里もまた緯度によるわずかな誤差の影響を受けます。
多少誤差があったくらい、実際の航海では風や潮流もあり、それほど厳密な定義は必要ありません。緯度による誤差はじゅうぶん無視できます。
しかし例えば船や飛行機の巡航速度を規定するとき、国同士の領海範囲を決めるとき、「緯度によって異なる」「国の制度によって異なる」では困ります。
そこで1929年に国際水路機関(International Hydrographic Organization:IHO)によって「四捨五入、端数切捨て」として、「1海里は1,852メートルきっかり」と決められました。
メートル法を基準にしたわけです。

この半端なような割り切ったような「1852」を覚えるいい方法があります。
カレンダーの 1日の下を縦読みします。
何年のどの月でも大丈夫です。
ほらね、あったでしょ



なかなか話が進まないなあ。月や太陽ってやっぱり遠いんだなあ。



2/4 地球の丸さ
3/4 地球・太陽・月の大きさ
4/4 人工衛星や小惑星の距離

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