初出は1940年とのことですから、もう75年前ですが、内容はちっとも色褪せぬ名作で、今でも副読本や入試問題に使われるので、目にしたことのある人も多いでしょう。
小学校高学年くらいならじゅうぶん読んで理解できる内容です。
未読の方はここにリンクを置いておきますので是非読んでみてください。
地球の円い話 - 中谷宇吉郎 青空文庫
今回はそのせっかくの名作を剽窃した上で蛇足を足すが如きものです。
2.地球はどの程度丸いのか
地球には歪みがあるし凸凹だってある、ちっとも丸くなんかないじゃないか。
ここにA4のノートにコンパスで円を書いたの用意しました。
A4用紙の幅は210mmあります。
罫線はA罫といって一般的な7mm罫です。
コンパスに0.5mm芯のシャープペンシルを装着して半径64mmほどに計って円を描きます。
じゅうぶん丸そうです。
地球はこの程度には丸いです。
前回「北極から赤道までの球体表面の距離の千万分の一を1メートルと決めた」と書きました。
北極→赤道、赤道→南極、南極→赤道、赤道→北極 で地球一周ですから、一周の長さは40,000,000メートル、
40,000,000 / π = 12,732,395.4m で地球の直径はだいたい12,732kmくらいだと。
とするとこのノートに書いた直径127.5mmの円は、だいたい地球の一億分の一の大きさです。
100,000,000 1の後に0が8個並んだのが1億です。
0を三個ずつでカンマ区切りしてるのは、慣れると便利だからです。
1mの1,000倍は1km、1,000分の1は1mm
このキロとかミリのようなものを「接頭辞」といいます。
桁が3つ増えたり減ったりするたびに「接頭辞」が変わります。
ミリのさらに3桁下は μ (マイクロ)です。
キロの3桁上はM (メガ)ですが、重さや容積の場合、慣例的にt (トン)を使うことがあります。
メガの3桁上はG (ギガ)、そのまた3桁上はT (テラ)、コンピュータの世界ではよく使われますが、それ以外の世界ではあまり使われません。
天文学や物理学、化学など自然科学の世界では3.45×10⁹ のように10の冪乗を上付き添え字で表記します。
メガマック、ギガミートとか付けたがる世界もありますが。
さて地球は丸いという話でした。
まず山と谷の凸凹について示します。
地球で一番高い山はエベレスト、海抜8,848mあります。
一番深い谷はマリアナ海溝、今のところ海面下10,911mが確認されています。
これを先ほどコンパスでノートに描いた「一億分の一の世界」に落とし込んでみます。
8,848m = 8,848,000mmですから一億分の一にすると小数点が8つ移動して0.08848mmです。
同様に10,911mは0.11911mmとなります。
合わせても0.19579mm ≒ 0.2mm、円の線の幅が芯の太さと同じと考えた場合、その半分にも満たないです。
次に地球がどのくらい潰れているか。
理科年表を見ると tide free system(潮汐による影響を完全に除去する)で、
赤道半径:6378136.59 ±0.10m
扁平率1/f: 298.25765±0.00001m
とのことですので、赤道半径6,378,136.6m、極半径6,356,752.3mとして、その差は21,384.3m
一億分の一に縮尺すると0.213843mmです。
凸凹と扁平を合わせても約0.4mmに過ぎず、北極点にマリアナ海溝があり赤道上にエベレストがあったとしても線の幅に余裕で収まります。
では赤道地方の高山と極地の深海の差はどうでしょう。
実は地球の中心からもっとも離れた地表はエベレストの頂上ではありません。
中米にエクアドルという国があります。正式名称は"República del Ecuador"といい、直訳すると"赤道共和国"という意味で、その名の通り首都のキトはほぼ赤道直下です。
そのキトから150kmほど南にチンボラソという山があります。
標高は6,310mですが、膨らんだ赤道近くにあるため、地球中心からの距離は実はエベレスト山頂より2,000mほど遠いのです。
一方極地の深海ですが、北極点近くに北極海盆という海の中の盆地のような場所があります。ここの最深部は5,440mとされています。
なので、それぞれを赤道直下、北極点と仮定して地球中心からの距離を取ると、その差は
(6,378,136 + 6,310) - (6,356,752 - 5440) = 33,134m一億分の一に縮尺すると0.33mm、やっぱり問題にならないですね。
とにかく凸凹も歪みも測量の精度も無視してだいじょうぶ、地球はノートにコンパスで描いたくらいには丸いということです。
1/4 地球を測る地球で測る
3/4 地球・太陽・月の大きさ
4/4 人工衛星や小惑星の距離
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